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金沢地方裁判所 昭和37年(行)4号 判決 1965年9月03日

富山県西砺波郡石動町上野本八二七番地

原告

大洋酒類株式会社

右代表者代表取締役

谷崎吉揮

右訴訟代理人弁護士

小原正列

同県砺波市中神一、三六〇番地

被告

砺波税務署長

渋谷吉郎平

石川県金沢市石引四丁目一八番三号

被告

金沢国税局長

佐藤健司

被告

右代表者法務大臣

石井光次郎

右三名指定代理人検事

山田二郎

法務事務官 山口三夫

金沢地方法務局訟務課長

老田実人

右砺波税務署長及び金沢国税局長指定代理人国税訟務官

炭谷忠雄

右当事者間の昭和三七年(行)第四号酒税調査決定等無効確認等請求事件について当裁判所は次のとおり判決する。

主文

一、原告の被告砺波税務署長がなした昭和三三年四月二一日附酒税調査決定及び被告金沢国税局長がなした昭和三六年一二月一八日附審査請求棄却の決定の各無効確認を求める請求並びに原告の被告国に対する請求はいずれもこれを棄却する。

二、原告の右酒税調査決定及び審査請求棄却の決定の各取消を求める訴は、いずれもこれを却下する。

三、訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一、当事者双方の申立

一、原告

「(一) 被告礪波税務署長が原告に対し昭和三三年四月二一日附酒税調査決定通知書をもつてなした酒税調査決定(礪波間第八六号)は無効であることを確認する。

(二) 被告金沢国税局長が原告に対し昭和三六年一二月一八日附審査決定通知書をもつてなした審査請求棄却の決定(間酒第七―四五号)は、無効であることを確認する。

(三) 第一項の酒税調査決定及び前項の審査請求棄却の決定は、いずれもこれを取消す。

(四) 被告国は原告に対し、金九四九万五、五三〇円及び内金七七〇万七、七〇〇円に対する昭和三三年五月一一日以降、内金五〇万五〇〇円に対する同年六月一二日以降、内金七四万三、六〇〇円に対する同年七月三日以降、内金五四万三、七三〇円に対する同年七月二三日以降各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

(五) 訴訟費用は、被告等の負担とする。」との判決並びに第四項につき仮執行の宣言

二、被告等

「(一) 原告の請求を棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第二、原告の請求原因

一、原告は、焼酎等の製造及び販売等を目的とする会社で、所轄税務署長である被告礪波税務署長(以下被告署長と略称する。)から焼酎の製造免許を受け、肩書場所においてその製造及び販売をしていたものである。

二、原告は被告署長より昭和三三年四月二一日附礪波間第八六号酒税調査決定通知書をもつて原告において昭和三〇年四月以降昭和三二年九月までの間に別紙第一表に記載された焼酎甲類二五度のもの六五〇石を移出したものとして酒税合計九二九万五、〇〇〇円の納税告知(以下本件賦課処分と称する。)を受けた。そこで原告は被告署長に対し、昭和三三年五月一〇日附異議申立書をもつて本件賦課処分に対し再調査の請求をなしたところ、被告署長は右再調査の請求を審査の請求として取扱うことを適当と認めたので、それによつて原告の右再調査請求は被告金沢国税局長(以下被告局長と略称する。)に対して審査の請求があつたものとみなされたところ、被告局長より昭和三六年一二月一八日附間酒第七―四五号審査決定通知書をもつて原告の右審査請求を棄却する旨の決定(以下本件決定と称する。)の通知を受けた。

三、その間原告は被告署長の本件賦課処分に基き昭和三三年五月一〇日から同年七月二二日までの間に本税九二九万五、〇〇〇円、利子税額一八万三、三〇〇円、延滞加算税額一万七、二三〇円の合計九四九万五、五三〇円の納付をなさしめられた。

四、しかしながら被告署長のなした本件賦課処分には、次のような重大かつ明白な違法の瑕疵があるから無効であり、従つて該処分を維持した被告局長のなした本件決定も当然無効である。

よつて被告署長に対し本件賦課処分の、被告局長に対し本件決定の各無効確認を求める。

(一)  原告は別紙第二表記載のとおり合計一三石の焼酎を移出したに過ぎず、被告署長認定の如くそれ以上別紙第一表記載の如き合計六五〇石の焼酎を移出した事実はないから右認定は誤認である。

(二)  被告署長がなした本件賦課処分には手続上の瑕疵がある。

五、仮りに被告署長がなした本件賦課処分の右違法な瑕疵が該処分を無効とする程度のものでないとすれば、本件賦課処分は右違法な瑕疵を理由に取消されるべきものであり、従つて該処分を支持した被告局長がなした本件決定も同様取消されるべきものであるから、原告は右被告等に対しそれぞれ右取消を求める。

六、以上のとおり、原告は納税義務がないのに前記のとおり酒税九四九万五、五三〇円を誤納し、これによつて被告国は法律上原因なくしての不当に右納付を利得したものであるから、原告は被告国に対し右九四九万五、五三〇円及び内金七七〇万七、七〇〇円に対する納付日の翌日である昭和三三年五月一一日以降、内金五〇万五〇〇円に対する同様の同年六月一二日以降、内金七四万三、六〇〇円に対する同様の同年七月三日以降、内金五四万三、七三〇円に対する同様の同年七月二三日以降、各完済に至るまで民法所定利率年五分の割合による金員の支払を求める。

第三、被告等の答弁並びに主張

一、原告の請求原因第一ないし第三項は認める(ただし第三項中、利子税額一八万三、三〇〇円は一八万三、七四〇円、延滞加算税額一万七、二三〇円は一万七、六七〇円である)、第四ないし第六項はいずれもこれを争う。

二、原告は、本件賦課処分の当然無効であることを理由として該処分等の無効確認と納付済税金の返還を請求しているがおよそ訴訟上行政処分が無効であることを主張するためには当該行政処分に重大且つ明白な瑕疵のあることを具体的事実に基づいて主張することを要するものであるところ、本件において原告は右主張を尽していないから原告の右請求は主張自体において失当である。

三、(各取消の訴に対する本案前の抗弁)

原告の本件賦課処分および本件決定の各取消の訴はいずれも本件決定の通知を受けた日から三月以内に提起しなければならないものであるところ(昭和三七年法律第六七号による改正前の国税徴収法第一六九条参照)、右各訴は右出訴期間内に出訴されていない不適法なものであるから却下されるべきものである。

理由

一、原告の請求原因第一ないし第三項の事実(ただし第三項中、利子税及び延滞加算税の数額の点を除く。)は、いずれも当事者間に争いがない。

二、原告は、本件賦課処分が当然無効であり、従つて昭和三〇年四月分以降昭和三二年九月分までの酒税につき、その納付義務がなかつた事由として(イ)本件賦課処分の基礎となつた焼酎移出の事実がなかつたにも拘らず、被告署長はこれを誤認して該処分をなしたもので、該処分には右実体上の瑕疵があること(ロ)本件賦課処分には手続上の瑕疵があること以上二点を主張するので判断する。

およそ行政処分が無効であることを主張するためには、単に抽象的に該処分に重大且つ明白な瑕疵があると主張し、または処分の違法原因が当然無効原因を構成すると主張するだけでは足りず、処分要件の存在を肯定する処分行政庁の認定に重大且つ明白な誤認があることを具体的事実に基づいて主張することを要するものであるところ、実体上の瑕疵に関する原告の前記主張は要するに被告署長は移出石数についての認定を誤つたから、本件賦課処分が当然無効であるというに帰し、瑕疵の重大明白性を具体的事実に基づいて主張するものとは認められず、他方手続上の瑕疵に関する原告の前記主張も、全く具体的事由を欠くので、いずれにしても本件賦課処分を無効とする原告の主張は、主張自体理由がないものである。

三、以上により、被告署長に対し本件賦課処分の、被告局長に対し本件決定のそれぞれ無効確認を、被告国に対し納付済税金の返還等を求める原告の請求は理由がなく失当としてこれを棄却すべきものである。

四、本件賦課処分並びに本件決定の各取消を求める原告の訴について。

被告は本案前の抗弁として、右各訴は、法定の出訴期間を徒過して提訴されたもので不適法であるから、却下すべき旨主張するのでこの点について判断する。

本件賦課処分並びに本件決定に対し裁判所に取消を求めて出訴するには原告が本件決定を受けた日から三月以内に提起しなければならないことは、昭和三七年法律第六七号(国税通則法の施行等に伴う関係法令の整備等に関する法律)による改正前の国税徴収法第一六九条第二項にかんがみ明らかである。ところで本件において原告が本件決定の通知を受けた日が昭和三六年一二月一八日頃であることは当事者間に争がなく、且つ右各訴が提起された日が昭和三七年六月二一日であることは本件記録上明らかであるから、右各訴は、法定の出訴期間内に出訴されていない不適法なものであるから却下すべきものである。

五、よつて訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 牧野進 裁判官 木村幸男 裁判官 島田礼介)

別紙

<省略>

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